またシンガポー。そしてばにさん。

飛行機でぶーんとあっという間にシンガポーです。タイペイから4時間半。はえー。

最近やたら飛行機乗ってるから?なんの感慨も無く飛行機に乗り、帰宅。この感動のなさは一体なに。飛行機代の分はエキサイトメントが欲しいものだ。たぶん今の俺はアロハバスのほうが燃える。空港も知り尽くしてるし、空中小姐への期待などとうに消え果ててるし、飛行機に対して燃えようがないことに気付きました。飛行機は慣れすぎるとどこでもドア状態になってしまって、逆にもったいないですな。もったいないからドクターマリオしました…

で、実家のネコたちですが。ぷりんさんとなおちんは、2分呼んだら出てきてくれました。よろこんでくれてはいるが、遅い!!! と文句を言う俺に母が「やっぱりわかるのねえ…」と、なぜかひいた雰囲気でコメント。なにそのドライなママ。そして問題の、渦中のひとであるばにさんはネコ部屋でお休み中ということでなかなかいらっしゃらず、いったいどんなことに…と俺の怯えはピークに達しました。お休み中なら無理に起こしに行かなくてもネ… と逃げを打ちつつトランク持って自室に入ろうとネコ部屋を横切ったその時!!!

突然ペタペタペタペタと駆け足の足音がして、自室のドアに手をかけた状態で振り向くとそこにばにさん!!! 小さめのエリザベスカラー土星になったばにさん!!! 薄暗がりに浮かぶ白い土星に強調されたその顔は、この世のものとは思えなかったです!!! 右目を中心にしてコメカミから鼻までツルツルにハゲていて、それがタダのハゲではなくて目からの分泌物でドロドロ汚れていてさながらケロイド状で、鼻の先は鼻の穴の形がわからないほどグズグズに崩れてかさぶたになってて、かわいそうに目は瞬膜が出ているのと腫れているので両目ともほとんど開いてない… いったいどうしちゃったの… ネコというより、オペラ座の怪人ばにさんラブの俺でもさすがに硬直しました。しかし意外なほどに元気そうなばにさんは、俺を見上げて「アーオ」と仰いました。「部屋に入れろ」と。その顔のアナタを俺の部屋に!それはどうだろう!判断できない!ちょっと時間を頂戴!!!

なにはなくとも着替えないとドロドロしたオペラ座の怪人ばにさんと対峙できない気がしたのでばにさんを締め出してソッコー着替えました。再び恐る恐るドアを開けると怪人はまだそこにいて「抱っこしろ」ひっえええええ。土星部分も気にせずに、ばにさんはしっかりと手を出して俺をしゃがむように促し、膝に足をかけてよじ登ってきました。その体を支えたときに、背骨がゴリゴリ掌に当たって、背骨以外もホネホネだったので、ああむかしはあんなに筋肉質だったのに、と泣けた。でもオペラ座の怪人な現実がスゴすぎて、なのにばにさんは元気そうで、混乱ゆえにコンマ1秒で素に戻った。なにもかもが強烈すぎなのです。泣くどころじゃないのです。

母は土星・ザ・オペラ座の怪人ばにさんと俺のツーショットを見て「あんたがいないときはあたしにべったりなのにくやしい!!!」とマジで怒りました。こんな怪人ネコでもひとり占めしたいのか…奇特な女…。先週はこのハゲ部分が全てかさぶたで血だらけでくしゃみも出て分泌物が飛び散り床がたいへんなことになっていたから、今のばにさんでも彼女にとっては天国(本人談。意味不明)だそうで。そんな状態でもなんとかやってこれたのも、母のばにさんへの愛情と、自分がネコたちのダイスキなママであるという自負からだったので、なんもしてない俺がプラッと帰ってきていきなりネコたちに好かれるのが母は大変ご立腹です。付き合いにくいよママ!!! 動物飼いのセンスは俺のほうが上なのはしょうがないじゃん!!!

シンガポー2日目の今日のばにさんは、ほとんど一日寝ていました。ひどい顔でずっと寝ていて、さんまをあげても食べなかったので心配しました。夜になったらやっと出てきて、ご飯を食べ、毛づくろいタイムには俺とママのふたりがかりできれいに拭われ、じっとしていました。母が「ミーちゃん、もう膝に乗ろうともしないのよ」と言い、言ったそばからばにさんが俺の膝に乗り、あらやだ!と母がムキになり、俺はかなり得意になったのも束の間、あまりにも軽いばにさんの、頼りない前足の感触が不意打ちで涙腺がドバーと!!! オロローン!!! なに泣いてんだ俺ー!!! ばにさんに悪いじゃないかー!!! もう必死で堪えました。

重病で、ひどい顔で、食事もまともに取れず、おまけに無理矢理土星にされても飄々と生きているばにさんで泣くのは失礼なの。かわいそうがるのも実は間違いだと思う。でもそんなばにさんがあたしの帰宅を喜んでくれているらしいことには不在を詫びたい気持ちで一杯でその術を知らない俺は泣かずにいられないのですよ明智君。そんな俺に母は「ハァ?こんなことで泣くの?」と冷たかったです。泣きのツボはひとそれぞれだと知りましたよ…