今日のクロネコチン

クロネコチンの姿勢が変わっていてほっとした。相変わらず土星カラーは外したままで、それに頭を突っ込んでいた。メガホンに顔を突っ込んでいる状況を想像してほしい。

クロネコチン、おばちゃんだよと言うと、まん丸な目でじーっと見て、じーっとしていた。ゴハンはすこしだけ食べた形跡があった。お気の毒さまなクロネコチンに、なんだかんだで今日で入院中日だよ、がんばってるね、土曜日にはお迎えに来て、おうちに連れて帰るからね、まあ毎日来るけどね、おうちにはクロネコチンのお部屋を用意してあるよ、最初はバスルームに2日くらい入っててもらってトイレ覚えてもらうからちょっと狭いけど、そのバスルームも1.5坪くらいだからここよりはマシだよ、小さいけど窓もあるしね、こんなに汚くないし臭くもないし病気の犬もいないよ、りょーちんもおじちゃんもクロネコチンが退院するの待ってるよと、延々ささやき続けた。延々な。途中で感極まって涙ぐんだりしながらな。医者が俺の存在を忘れて長イスで昼寝ぶっこくほど延々面会しました。このささやき作戦が裏目に出たらどうしよう…

しかしこの入院部屋は臭い。鼻が曲がる。しばらくいると体中にニオイが染み付きそうな臭さ。3メートルx5メートルくらいの部屋にオリが大小2階建てで積み重なってて、なぜか部屋のど真ん中に便器が置いてある。まさかここ、従業員用トイレも兼ねてんのか?どんな福利厚生だ。喫煙室も兼ねているらしく、タバコ各種が棚にあった。犬の飼料が大袋で口を開けたまま床に置かれていた。なんかなあ。

あたしがクロネコチンだったら、病気の犬やイップクする従業員や用を足すドクターなど見たくないので、スタッフに声をかけて許可を得てから持参したバスタオル&洗濯バサミでオリを囲みました。オリの周りは最後に掃除したのいつだ?というくらい汚れがこびりついていて、なんかギトギトしたのが指についた。入院患蓄に薬をあげたときに使ったらしい注射器の針のないやつも発見。猛省を促したいがクロネコチンはタダで泊まっているので強気に出るわけにもいかねえなあと思い、タバコの隣に置いておいた。

病院は改築したばかりでとってもキレイなのに、見えないところはひどいもんだ。もしかしたらこの部屋はレスキュー動物用なのかもしれない。だってあたしはりょーをこんな野戦病院みたいなところに泊めたくはないもの。断じて拒否する。でも入院用の部屋をふたつも作るかなあ。わからん。訊くのも鶏婆だしなあ。

病院スタッフの愛想のいい小姐に、「野良猫って捕まるとみんなこんなに緊張してるもの?」と質問したら、「みんなそうですよ。この子はマシなほうです。まったく触らせない子もいますから」と言われた(クロネコチンは触らすのか?!)。とにかく6ヶ月に及ぶ餌付け期間が功を奏したのだろうか。少なくともクロネコチンは、人間が与えるエサに慣れているのは確かだ。いつも食べてるゴハンをタッパーに入れて、これあげてくださいとお願いした。これもタバコの隣に置いた。

バスタオルで囲まれたクロネコチンは、また明日ねと声を掛けると、いつもの顔にかなり近い顔であたしを見た。囲ったことで土星カラーに顔を突っ込まなくてもよくなったらしく、顔を上げて見ていた。もっと早くそうしてやればよかった。ていうかカラーはしなくていいのだろうか。

病院の看板猫をいじり倒して帰宅。この子もよく見たら、爪がざくざくで、なんかおかしなことになっていた。でもものすごく愛想がいい。クロネコチンも見習うといい。