恐ろしかったこと

昨日はAT に行ってきました。ひとりで。

AT の犬たちは、週に1回しか行かないあたしなんかでも、がっちり覚えていて、最近ではタクシーで乗り付けても吠えないほど。採石場の大型トラックを敵視している彼らにとって、タクシーは獲物として小さいので吠えないというのもあると思うけど。で、知らない人には吠えます。不思議。あたしなんかより人の顔覚えんのうまいんじゃないか。そしてキス犬シスターに向こう見ずなジャンプキスをお見舞いされて悶絶。なぜかって?口じゃなくて目にされたからさ。コンタクトレンズしてるんで、マジでやめてと懇願。眼球へこんだかと思いました。

俺のFavorite 犬のトガさんは、別のグループのひとがAT に来たとき地獄の番犬のように吠えました。トガが爆吠え三本足のジェイクに見えたほど。首輪つかんで「いいからいいから」ってやってたんですけど、あんまり恐ろしいので「これはあたしが首輪つかんでいていい犬ではないのではないか」と不安になるほどで。Rita に「トガが人間相手にあんなに恐ろしくなるって珍しいよね」って言ったら、笑って「トガは知らないひとにはいつもああだよ。Sは常連だからニコニコのトガしか知らないのよ」って。ショック!トガに恐ろしい一面があったなんて!むしろへたれの部類だと思ってたのに!俺もまだまだねえ。

そんな衝撃の一幕の後で、スペンサーが右目の周りにケンカ傷つくって流血していたのでSean を呼んだ。 「これ見てよー」とスペンサーを抱っこしてSean に向けたら、ノー、耳の後ろにもどピンク色がバックリと。 「あああSean やばい耳も耳も」と直視できずに言ったらSean 「あ、これチキン」。生食療法を採用しているAT では、ゴハンの時間のあとは犬たちがチキンの組織まみれになることもしばしばでござる。スペンサーのもふわふわの毛の耳の後ろに骨のかけらがついてたのが傷口に見えたのでした。恐ろしい。ナポレオン爺さんも、なにがあったのか「誰かナポレオンの背中でゲロ吐いたっぽいことになったんだけどこれナニ?」 「あ、それチキン」ということになっていました。恐ろしい。

拭くといえば。チャーリーは気難しいジャーマンシェパード爺さんで、いつもつまんなそーな顔で、部屋の隅で寝てます。チャーリーは皮膚病や耳だにがいるので手入れを嫌がり、嫌がると唸るので、あんまし構われてないんじゃないかな。本人もほっといてくれってかんじだし。そんなチャーリーが燃える時間があるのに気づいたのさ。彼は耳掃除は死ぬほど嫌いだけど、顔を拭かれるのは大好きなのです。ナポレオン爺さんのチキンの残骸を拭いてたら、そばに来て「ワシにもやってくれんか」と唸った(唸らないでほしい。怖いから)。じゃあ次はチャーリーさんね、と顔を拭き倒しました。体もごしごしやってやりました。おとなしーくしてて、たまにあたしを見上げるけど、表情がないから、見つめられると「チャチャチャチャーリーさん、…怒ってらっさるの…?」とビビッてしまう俺。老いてもジャーマンシェパード… 見るものへの心理的影響も考慮して作った犬だね(知らないけど)。もうやだチャーリーさん顔が怖い、とやめると、あっそう、とチャーリーさんはまたどこかへ消えてしまい、もしやと思って「チャーリーさん!顔拭こう!」と呼んだら「ワシはここじゃよ」とスタスタ出てきて俺の脚にどすーんとよっかかってきたので驚いた。呼ばれて出てくる犬だと思わなかった。そんなに拭くの好きか。怖い顔は損だなあ。まあ元悪役商会からしょーがねーな。

チャーリーをいじめた現行犯でかつて俺が怒鳴りつけた天敵ジェイクは、昨日も俺に吠えました。でももうジェイクが吠えてもほかの犬が便乗しないからジェイクひとりでバカみたい。 「あらジェイク!吠えちゃうの!おバカちゃんだね!プリンス笑ってるよ!」と幼稚園の保母さんみたいに騒ぐと、うれしくなったプリンスクッキーと遊びケンカを始めて、その傍らでジェイクが吠え、そのうち「なんだよみんな遊んで… 吠えてるの俺だけ?」っぽくなってなんとなく吠えるのをやめて、ほかの犬につられて尻尾を振る… という異様な状態に。ジェイクは吠えることでほかの犬も巻き込んであたしをやりこめたいらしい。でももうほかの子たちもあたしには吠えないのをわかってない。いつまでたっても言葉が通じない犬っているんだなあ。ま、理由は何にせよ、吠えやんだジェイクを褒めたら、すごく複雑な表情で、尻尾振ってた。従う相手がほしいんだろうなあ。

黒黒はSean に抱っこされるほどになりました。すっごいいやいやだけど。ほかの犬にもあまり威嚇しなくなった。特定の犬にいじめられることがわかってきて、事務所の室内犬グループに入れてもらってます。いじめられても怪我はしてないです。