提灯行列

今日は年に3回の緑内障の検査の日だったんで病院に行ったんですよ。

先生はおじいちゃん先生で、台大の先生で、見るからにインテリなの。口調もインテリよ。でもおじいちゃん先生だから、前回会ったのが4ヶ月前のあたくしのことはまったく覚えてないよ。毎回自己紹介から入って緑内障はどこで検査してわかったの?」 シンガポールの人間ドックです」 「あー!はいはい!思い出した」 なによりです先生。

検査結果の検索待ちをしていたとき先生とチンガポールの話になって。なんか全国大学ランキングっつーのがあるらしくて、それでチンガポールのチンガポール大学は、生意気にも台大よりもランキングでは5つほど上だったそうだ。へえー。各大学から出てる論文の数とか質とかもろもろでジャッジするんだってさ。規模が違うから当然論文なんかは台大のほうが上らしいんだけど。それが何を意味するのか俺にはさっぱりなんだけど。で、なぜかそこから

シンガポール陥落ってわかる?」 「わっ、わかります(つい癖で身構える)」 シンガポールが陥落した日、僕ら提灯行列したよー」 「提灯行列っ?!」 「したよー。台湾だけじゃないよ、日本本土でもしたよ。ねー?(と待っているおばあちゃん患者さんにふる)」おばあちゃん患者さん、にこにこうなずく。 「えー先生、お若く見えてけっこうお年なんですね?!」 「そうだよー。シンガポールは、攻めるのが難しかったんだよ。誰だったかな、乃木大将だったかな、山下かな。だからお祝いだったよ」 「なんかマレーシアからゴムボートに自転車積んで攻め込んだって聞きましたが」 「そうそう。難攻不落って言われててねえ」 シンガポールではいまでもカレンダーに『シンガポール陥落の日』が記されてるんですけど、その日は日本人学校の前に、バスもタクシーも止まってくれないんですよ。怖かったです」 「…シンガポール人はねえ… 同じ華僑だけど、僕もたくさん知り合いいるけどー、なぁんか違うんだよねえ…」 と顔を曇らせるのであった。

目の検査に行ってこうもフランクに提灯行列の話を聞くことになろうとは。提灯行列なんて単語、耳から聞いたのは初めてかもしれない。戦争の話を日本人に敵意なくするのは台湾人だけだなあ、と、つくづく。