怒ったぞ
さーおばさん今夜は愚痴るよ。
夜の散歩に行ったら、小花を夜のお供にナイトシフトをやっていた守衛が道の角で香腸屋さんのおばさんといっしょにいた。
小花の昔なじみに会うのはうんざりだけど1本道だから避けられなくて、当然小花も気づいて大暴れ。
俺でかいの2匹持ってるんですけど… りょーは知らんおっさんの接近におびえるし。
守衛(元)はかまわず近づいて小花を撫でたりして小花大暴れ。俺らこれから散歩行くんですけど。
厭味で「飼う気になったんですか」と訊いたら「ええー?」つって俺を見上げ(俺仏頂面)。
香腸のおばさんが取り成す気か「この人すごくかわいがってたのよ!」と言うので俺思わずプチキレまして
「でも誰も小花のこと要らないから、あたしが面倒みてるんでしょ?!」と言うと黙り込み。
香腸おばさんは気にしたのか、俺にお菓子をくれようとしたけど、手が塞がってるから断った。
手が、塞がってるんだよ、犬2匹だもん、見えません?大変そうに見えないかな俺?
それでも小花を撫でないといけないのかな?
そのあと公園に行って犬たちを放してしばらく(イライラして)過ごした。
帰るときになって呼んだら小花が、思い出した。
今日は守衛のおじちゃんがあの道の角にいるってこと。
そのとたんに公園からすっ飛んで行きやがった。野良犬時代の小花に戻ってたね。
りょーが呆気にとられて小花を見て、あたしを見て、呆然としてて、俺は仏頂面で。
これで小花がクルマに轢かれたらあたしのせいだし、後がたいへんだ。
守衛のおっさんがいなくなってて小花が探しに行っちゃってたらやっぱ、たいへんだ。
でも俺は走って小花を追うことはできないから、悪いけど見送った。
小花は果たして香腸んとこでおっさんの横に座ってニコニコしてた。
おっさんはどこか自慢げに小花に「去あ!(行きな)」って言って、小花はニコニコしてて。
小花に首輪をつけて帰ろうとしたらおっさん、また小花を撫でて座らせてお手とかさせに来た。
俺キレちゃった。
「おじさん、悪いけどもう小花に会いに来るのやめて」
「小花に会いに来たわけじゃない、昔の同事に会いに来ただけ」
「あたし妊娠してんの。犬に走られたり引かれたりして転ぶとまずい。小花を興奮させたくない」
おっさんは話の急展開にびっくり&恐縮して黙り込んだので、それを見届けて家に帰った。
でもあのときほんとに言いたかったのは妊娠のことなんかじゃなくて、
どのツラ下げて小花に会いに来れたんだってことだよ。
どいつもこいつも。
昔ずっといっしょにいた、仲間だと思ってたひとに会えたら小花が喜ぶのは当たり前だ。
小花がいまでもあいつらを好きでも、あたしは絶対にあいつらを許さない。
小花がまだあいつらを慕うのが不憫というか、たまらないよ!
帰宅してリビングに入ると、りょーが慌ててあたしの前に立ちふさがって、嘘ニコニコした。
あたしが小花に怒っていて、小花を叱ると思ったらしい。
りょーの尻尾がグルグル円を描いて回っていて、超びびってるから、
いや怒んないよだって小花悪くないし… って言ったらもう腹が立って腹が立ってね!
小花はおっさんのところを去るときも「じゃあねー♪」ってなかんじだったけどね!
あの野郎のせいでりょーにまで要らん気を遣わせやがって、許せねえよ!
香腸のおばちゃんにも悪いことしたよ!
あっあともう1点いいかな?!
小花の昔なじみだからってさ、小花は今はあたしが面倒見てるあたしの犬なわけじゃん!
勝手に撫でたりすんな って思うのおかしいかな?!
なんでおめーが小花撫でるのにあたしとりょーが立ち止まんねーといけねえんだよって思うのおかしい?!
あー腹立つ、小花になにもしなかった連中全員不幸になれ。