ばにさん最後の日

むかしばにさん


ばにさん死んじゃいました。

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出掛けに、寝返り損ねて横寝になってたばにさんを見て、もうだめだなとは思っていたんです。

母の膝の検診について病院に行った帰り道、ゴルフから帰って来た父の電話で知りました。

家に誰もいない間に死んでしまっていました。

ひとりになりたがっていたし、安らかな寝顔だったのでよかったです。

覚悟させてもらっていたので、だいじょうぶです。

でもばにさんが好きだった黒いTシャツを箱に入れてやろうとしてタンスから取り出した時

Tシャツの右肩に元気だった頃のばにさんが爪であけた穴がいくつもあって

それが唯一ヤバかったです。穴あきTは全部ばにさんと一緒に箱にいれました。

あんなのもう二度と見れない。

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病気になったばにさんが病気から解放されるには死ぬしかなかったわけなので、

ばにさんはやっとラクになれたわけだから、今はむしろ喜ぶべきなんだと思う。

今回の帰国直後はばにさんの調子がよかったので抱っこしろって言ってもらったし、

抱っこしてあげられたし、お見送りもできたので、あたしはラッキーでした。

さいごにばにさんに、瞬間でも必要とされたことが嬉しかったです。

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死んじゃったばにさんを思うよりもばにさんの思い出を思い出すのがつらいです。

あたしを猫好きにしたばにさんがもういないのが信じられないです。

もうあのドアがきしむような変な声が聞こえないなんてウソみたいです。

死んでしまったばにさんは思ったよりも大きくて、買った箱には入りませんでした。

死んじゃって、元に戻ったのかなーと思いました。

カッコイイネコでした。ばにさん以上のネコには二度と出会えないと思います。

ひとつの時代が終わったって感じ。覚悟はしてたけど。

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というわけでぷりんさんが次の世代を引っ張っていかなきゃいけないんですけど、彼は今日も洗濯室に閉じ込められていて、救出に向かうと「ヒャー」と言いました。猛省と自覚を促したい。それがダメならなんでもいいから面白おかしくして母を忙しくさせてもらいたい。母は「動物飼い」としていささか感情的なのでこういうときの回復が遅いのです。父なんぞ夕飯の時に「乾杯」って言いやがったよ。無神経が過ぎるよ。どついたら「ええとではお悔やみに…」っておっせーんだよ。

あたしは部屋に閉じこもってマイコンの中のばにさんの昔写真でめそめそしてます。