J(細)について話そう

昨日オットがお客さんの息子の結婚式に、高雄へ行きました。そのあと友達に会って夕飯食ったら帰りの新幹線が売り切れで、1泊することに。

全然関係ないけどそのお客さんの息子というのがえっらい珍獣でした。結婚式でカード渡すじゃん。あれって「ホントに出席しましたよ。預かってたご祝儀も渡しましたよ」という証拠にもなるんで(そんなのうちの家だけか?)仕事関係の結婚式だとオットは必ずカードを持ち帰るの。いやー、ヨメも珍獣だったよ。タイかどっかの場末キャバレーの前座のデュオの営業用カードかと思ったマジで。あんな顔に生まれないでよかった。お父さんお母さんありがとうと、心から思った。

話を戻そう。オットが高雄で会ってた友人J(細)は、オットがチンガポール時代行ってたインターナショナルスクールの後輩だ。俺とJ(細)はタメだ。海外の台湾系の結束力は高校レベルでも気持ち悪いくらい濃密で、俺がオットに出会ったカレッジ時代はオットもJ(細)も高校を卒業していたけど、まだまだタテのつながりは健在で、インターの小僧どもの集うところ(パラゴンSOGO(当時)地下の紀伊国屋前が定番であった)に通りかかるとオットはいつも挨拶をされていて実に気色悪かったんだ。J(細)と俺はカレッジでいくつかクラスが同じで、その後俺がデザインカレッジに転学して1年したらJ(細)も同じ学校に来て、たまに学校でしゃべったりしてた。J(細)の専攻はコンピューターグラフィックだったけど。その後J(細)はチンガポール女子と結婚して実家のある高雄で家業を手伝っていると聞いていた。オットはたまに高雄に行くと、他の友人も交えてJ(細)と会っていた。

J(細)元気にしてた?って聞いたらオットは顔を曇らせ「チンガポール人のヨメさん、チンガポール帰っちゃったって」 「なにそれ?!」 「ほらJ(細)って本妻の子供じゃないじゃん、でもヨメさん、本家とそこまで関係が悪いと思ってなかったらしくて、本家がやってる某有名企業のHQに行こうとして、門前払いくらったんだって。体裁が悪いから姿見せるなって。食品関係だから店舗もいっぱいあるんだけど、そのどこかのレジ係としても雇えないって言われて怒ってチンガポール帰っちゃったって」 「なにそれ!J(細)はどうしてんの?!」 「しんどいみたい。暗い顔でひっきりなしにたばこ吸ってた…」 あの細い体で?! J(細)!やっと幸せになれたと思ったのに…!

俺がJ(細)に初めて会ったのはパラゴンSOGOの紀伊国屋の前だったよ。インターの小僧どもがうじゃうじゃいるはずなのにその日はJ(細)だけで、オットが「待ち合わせ?」って聞いたらJ(細)が「友達と待ち合わせのはずなんだけどまだ来てないみたい」っつって、ふーんみたいに別れたんだけど、あとでオットがため息つきながら「J(細)、あれたぶん友達に置いてけぼりにされてる。J(細)は愛人の子だから彼の友達たちにばかにされてるんだ」 高校生だよ?!どんだけ時代錯誤だよ台湾小僧社会!!!って、俺はたいへん驚き、憤ったのを覚えてるの。

それからカレッジで一緒になって、文学かなんかのクラスで『家族の中で見られる問題について』グループディスカッションするってのがあったときにJ(細)が同じグループにいたんだけど、みんなが「門限かなー」とかのんきなこと言ってるときにJ(細)だけが「離婚。離婚は家庭内における最大の不幸だ」って静かに言いましてね、俺は事情知ってるから、あっ!!!って思って、非常にせつなくなったの。

さらにデザイン学校時代、J(細)は俺を見つけると「Sちゃーん」つって、日本人俺だけの学校なのに日本語で俺を呼ぶのは誰?!と俺を飛び上がらせるほど流暢に日本語で話しかけるようになって、ああ、J(細)はいま、きっとたくさん日本人の友達がいるんだわ、よかったねJ(細)、しょーもない理由であんたを見下す同郷の連中といるより日本人といっしょにいればいいよ…って、胸が熱くなったの。

そんなJ(細)が、好きなひとと結婚して実家でお母さん(さぞかし苦労があったことでしょう)の経営する本家系のお店を手伝って、幸せになれたと思ったのに……… なんかすげーせつねー… なんでJ(細)が、J(細)のせいじゃないことで、いつまでもつらい思いをしないといけないのか…

J(細)は、ヨメさんを待たずに来週から台北に住むことにしたそうです。学生時代の友人が興したアパレル系メーカー在大陸の、台湾の代理店をやるんだそうです。がんばれJ(細)。仕事うまくいくといいね。つーか手放しで幸せなあなたを一度くらい見てみたい…

チャイニーズって悲惨な家庭、多いよね。異常なのも。J(細)はお金があるだけましなんだろうけど、それが彼の苦労とか持って生まれた持って生まれなくてもよかった不幸に見合っているかどーかは傍目に見ててもわかんない。あたしも別に彼をかわいそうがれるようなアレじゃないんだけどなんかねー、やるせないよねー。あーむしゃくしゃする…

で、思わず書いたというわけさ。ええ、長々と。