かける言葉も見つからない

Lは動物を愛していて正義感にあふれていて強い女性です。事件は台北県深杭で起きたことで、彼女の近所の犬3匹も死にました。

Lは先月から、近所の頭のおかしいおやじと戦っていました(Lはガイジンだけど中国語べらべら)。おやじはキチガイ無職の酔っ払いで、家の軒先で何匹もの犬を"飼っている"のですが、屋根もろくになく身動きもできないほど狭いオリに閉じ込めてまともに世話もしておらず、コンディション最悪の犬たちはぜんぜん外に出してもらっていないので、Lはさんざん、それが虐待であることを説明し、脅したりすかしたり動物たちのためにおやじと戦ってたの。事件性がないから警察にも相手にされず、それでも犬たちを救おうとしてた。自分の犬を散歩に連れて行くときは無理やりその犬たちをオリから出して連れて行ったりして、そのたびにおやじと怒鳴り合いになりつつ。

そしたらLが散歩に連れて行くときに放されているおやじの犬を見た何者かが、毒をまいたらしい。おやじの犬は3匹が被害に遭い、Lが急いで病院に連れて行ったけど、みんな死んでしまったの。おやじはLを責めて、Lも自分のせいだとすごく気に病んでた。Lのせいじゃないのに。

そしたらLの犬Roxyも具合が悪くなって今朝死んでしまったの。原因は毒でした。自分がヒーローになろうとしなかったらRoxyはまだ生きてたって考えるのを止められないってLはそりゃもう落ち込んでて、かける言葉も見つからなかったよ…

そういう事故って飼い主がどんだけ気をつけてても起きるときは起きるし、そういう事故が軽いか致命傷か、いつどんなふうに起きるかは神様しかわかんないし、第一毒をまくような信じがたい人間が存在することはLのせいでは断じてないって言ったんだけど。言葉が見つからなかったんでアレだけど… だって自分の犬が毒で死んだなんて、そんなひとになにを言えようか。

うちの近所でも以前、公園の極道一家が一家皆殺しに遭ったことがありました。りょーが一歩間違ったら死んでたことがおそろしかったし、ただアンチ野良犬というだけで犬に毒を盛って殺そうと思う人間がすぐ近くにいることが、ホント怖かったよ。だからLizaの気持ちわかるし、毒を盛るという攻撃のターゲットが無差別である以上、もうLに矢面に立ってほしくないから、ATの弁護士にレター書いてもらって警察や地域の自治会に送るのはどうかなと進言しました。つーかもうこの件から手を引いたほうがいいと思う、Lになんかあったらやだから。家借りてる立場だから、近所で浮くのも避けたほうがいいと思うし。

生き残りの犬4匹のうち2匹はLの友達が一時預かりでその場から連れ帰り、あたしはノリスケがいるし小花のことがあるから預かれないけど、動物病院に泊めるとからな金出すって言いました。一刻を争うことが、お金で解決するならそうするべきだ。遠慮しないでくれるといいが。

動物を殺すような人間がいる一方で、動物たちにましな一生を送らせたいと願うLみたいな人間もいて、後者のほうが分が悪いとはこれいかに >神様。知らずに毒を食べて苦しんで死ぬ犬たちが、なにをしたっていうんだろう。呆然としてしまう。

こういう事件が起きるたびに、台湾の野良犬たちは一見しあわせそうに、地域に適応して共生しているように見えるけど、実際は明日の命の保証さえないくらしをしていることを、思い知らされます。事務所に毒投げられたらと思うとぞっとする。そういうことも起こりうる、そんな社会に生きてることを、たまに思い出して警戒したりするのも必要だと思う。隣の家の人間が犬殺しかもしれないんだから。