食卓猫

お見苦しい写真ですが。

カサノバ様を探せ

カサノバ様はいつも、こうして至近距離で、誰に頼まれてもいないのにかわいいご自分をご披露しておいでです。飼い猫の鑑ですよね彼は。人間様のごはん中はなんにもしてきません、見てるだけ。食べ終わると分かるのか、俺に頭突きをしに来ます。アゴ目掛けて。けっこう痛いです。続いて痛みに顔をしかめる俺の、顔やら首やらを舐めます。これも痛いです。なにがしたいのか、さっぱりわかりません。そうしながらひっきりなしにニャーニャーニャーニャーいうのです。

「わかりません!カサノバ様!わかりません!」 「ニャーン」 「痛いです!ベロが痛いですカサノバ様!」 「ニャーン」 わかりません…!わかりあえる日が来るとも思えない…!

あと俺がトイレに入ると必ず来ます。来て、脚にスリスリして、そばに寝転んでグルグルいうのです…。楽しいですか、俺のトイレ待ちは。こうも毎回トイレにまで来られると、カサノバ様には予知能力があって、あたしがいつかトイレで死ぬのを待っているのではないかと思ってしまいます。「…カサノバ様、あたしいつかトイレで死ぬんですか」 「ニャーン」 わからない… わからないわ…!

夜中に頻尿でトイレに起きる俺を、トイレ前でじっと待っているのも怖いです。彼のネコらしからぬマメさが怖い。暗闇で「そろそろ来るころだと思ってたよ…」みたいな顔、すんな。俺のトイレに間に合わないときは、トイレを終える俺を出待ちします。暗闇の階段の一番上まで上りきらずに肩から上だけ出して「もう部屋、戻んのか…」なんて恨めしげな顔、すんな。怖いんだよ。

先日も食後にニャーニャーニャーニャーなにがお望みなのか私に訴えるカサノバ様を見ていてほとほと理解に苦しみ、ふと心が無になったとき、「ああ、あたし、カサノバさんが死んだら、すごい悲しいと思う」と思い至り、ニャーニャーニャーニャー仰るカサノバ様に、 「やめて!カサノバ様、あたしをそんなに愛さないで!お別れする日がつらいから!つらくなるから、あたしたちすこし距離を置きましょう?!」(逃げる)「ニャー!」(追う)つって、昼ドラみたいな一幕を、半分本気で演じたのでした。

愛されすぎて困るだなんて、贅沢な悩みですが。でもほんとにカサノバ様の愛に応え切れないんですよ明智君。